短期記憶とは何かがわかる-記憶のシステムを理解しよう

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記憶には、短期記憶と長期記憶があるということをご存知ですか?
でも、その2つがどう違うかということや、そもそも記憶はどうやってつくられるのかということは、よくわかっていないという人が多いのではないでしょうか。

ここでは、短期記憶とはどのようなものか理解するために、脳に記憶が残るしくみや記憶の種類、短期記憶の特徴などをわかりやすく解説します。

脳科学や医学の分野は、日々研究が続けられて新しい事実が生まれ、今までわからなかった脳のしくみや機能が、少しずつ明らかになってきています。
そうした最新の情報を交えながら、神秘的な脳のシステムを紹介していきましょう。

目次

1. 脳に記憶が残るしくみ
1-1. 五感から伝わる電気信号
1-2. 記憶をつくり出す海馬
1-3. 年齢に関係なく増え続ける脳細胞

2. 記憶する時間による3種類の記憶
2-1. 感覚記憶
2-2. 短期記憶
2-3. 長期記憶

3. 短期記憶が長期記憶に移行する3つの条件
3-1. 強烈な印象であること
3-2. 重要であるという認識
3-3. 反復による定着

4. 短期記憶障害とは?
4-1. 短期記憶からなくなるアルツハイマー型認知症
4-2. 意識がある「もの忘れ」は心配ない

5. 短期記憶を鍛える方法
5-1. 短期記憶の容量を増やす「メモ」
5-2. 血流改善で脳機能を活性化

まとめ

1. 脳に記憶が残るしくみ

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脳の構造などというと、とても難しく感じてしまうかもしれませんが、できる限り専門用語などは使わずに、記憶を理解するために最低限必要なことのみを解説します。

この基本がわかっていると、たとえば記憶力を鍛えたいと思ったときにも、効果的な方法がよく理解できるはずです。
はじめて目にする単語があっても、いい機会ですから覚えてしまいましょう。

1-1. 五感から伝わる電気信号

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人間は、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」という五感から情報を得ています。
五感で受けた刺激は、神経細胞から神経細胞へと電気信号として伝わって脳へと届きます。

目で見た情報は、脳全体の85%を占める大脳を覆っている大脳皮質の後頭葉、味覚や全身で感じた触覚の情報は頭頂葉、耳で聞いた情報は側頭葉という部位で認識され、嗅覚だけは大脳皮質の内部にある大脳辺縁系という記憶を司る部位に、ダイレクトに伝わります。

大脳辺縁系は進化の過程で古くからあった脳の中心であり、心拍、呼吸、血圧、体温など生命維持に不可欠な身体機能を調節する自律神経中枢の中心となり、食欲、性欲といった本能や感情、睡眠中の夢などを管理する部位で、短期記憶を保持しています。

1-2. 記憶をつくり出す海馬

五感で受けた情報から記憶をつくりだしているのは、左右の大脳辺縁系にひとつずつある「海馬」と呼ばれる部位。
ギリシア神話に登場する想像上の動物の尻尾に、形が似ていることからつけられた名称です。

海馬に保持された短期記憶から選ばれた情報が、大脳皮質に送られて長期記憶として刻まれます。

脳の後方にあって大脳に囲まれている小脳は、脳全体の10%程度しかありませんが、平衡感覚や運動を司る大事な部位で、「手続き記憶」と呼ばれる身体で覚える長期記憶に大きな影響を及ぼします。

脳が出す様々な指令は、脳の中心下部にある脳幹を通じて大脳から脊髄へと電気信号として伝わっていき、五感の入り口となる目や耳にも情報が送られていきます。

1-3. 年齢に関係なく増え続ける脳細胞

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記憶は、脳に1000億個以上もある神経細胞(ニューロン)とそれらがつくり出す複雑なネットワークに蓄えられると考えられています。

脳の神経細胞は、ある年齢以上になると増えなくなるというのが常識でしたが、20年ほど前にアメリカで、この説が覆されました。

海馬の入り口近辺にある歯状回と呼ばれる部位では、年齢に関係なく神経細胞が生まれ続けているという研究結果が発表され、その後も研究が続けられて、2018年にコロンビア大学のモーラ・ボルドリーニ准教授が、人間は生涯、脳の神経細胞を増やしていることを解明したのです。

高齢になっても脳細胞は増えているのに、「もの忘れ」が増えるのは、神経細胞に酸素や栄養素を運ぶ能力が衰えるため、神経細胞のネットワークをつくる能力が低下するためでした。
これは、高齢になっても脳細胞に酸素や栄養素をしっかり届けられれば、記憶力は低下しないということなのです。

 

2. 記憶する時間による3種類の記憶

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記憶は、情報が残される時間の違いから、「感情記憶」「短期記憶」「長期記憶」という3つに分類されます。
短期記憶とはどのような記憶か知るために、この3つの記憶の特徴を理解しましょう。

2-1. 感覚記憶

五感で受けた刺激が、目や耳といった器官で瞬間的に保持されるのが感覚記憶です。
感覚記憶は意識されることはありませんが、この刺激の中から意識した情報が、電気信号として脳へと伝えられます。

目で見たものや耳で聴いた音をすべて覚えることは、いくら人間の脳が優れていてもできません。
もしも、そんなことをすれば、海馬はすぐにパンクしてしまうでしょう。

感覚記憶はほとんどが瞬間的に消えていき、刺激の情報が残るのは長くても1~4秒程度とされています。

2-2. 短期記憶

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五感で受けた刺激の中から意識したものは、電気信号として脳の各部位へと伝わって認識され、大脳辺縁系の海馬に情報が送られて一時的な記憶として残ります。

これが短期記憶の正体。

短期記憶は数十秒から数十分で消えていくものが多く、長いものでも数日間しか覚えていません。
短期記憶は保持できるメモリの容量が多くないので、人間は新たな情報を入れるためにわざと古い記憶を消していると考えられています。

近年の研究では1カ月も残っていた短期記憶があったいう報告があり、短期記憶から消した情報も、意識しない情報として1年近く残るので、ふとした記憶のネットワークづくりで復活することもあるという説が支持されています。

ふとしたことで蘇る、記憶の不思議さを感じたことはありませんか?
自分でもすっかり忘れていた過去の記憶が、ある瞬間、鮮明に思い出されるようなことです。
脳には、まだまだ解明されていない神秘的な要素がたくさんあります。

2-3. 長期記憶

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海馬に保持されている短期記憶から、選ばれた情報だけが大脳皮質に送られて長期記憶となります。
長期記憶は、一度貯蔵されたら多くは年単位というような長い期間忘れません。

中には数時間で忘れてしまうものもあると考えられていますが、逆に生涯忘れない記憶もたくさんあります。
通常、一般的に「記憶」と呼ばれるのは長期記憶のことで、情報が保持される大脳皮質の神経細胞がもつ容量は無限大だといわれます。

長期記憶がどれだけの期間保存されるかということは、情報としてどれだけ引き出されるかということもかかわります。
記憶はネットワークで保持されますから、関連付けられやすい情報は何度も思い出すことになり、それがまた新たな長期記憶をつくり出すのです。

 

3. 短期記憶が長期記憶に移行する3つの条件

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記憶力を高めたいと思っている人は多いですよね?

記憶力を高めるということは、海馬に保持されている短期記憶をいかにして大脳皮質に送って長期記憶にするかということです。

言葉にすると簡単ですが、勉強も仕事もこれがうまくできるかどうかで結果が変わります。
海馬の神経細胞は100億個程度しかないのに、日常生活の中ではとても重要。

短時間だけ覚えていればいいことはたくさんあります。
例えば、会話をするときには、相手の話を覚えていながら自分の発言を考え、流れを記憶しながら意思の疎通を行いますよね。
これは短期記憶の中でも、「作業記憶」とか「ワーキングメモリ」と呼ばれる記憶。
日常生活のすべては作業記憶で成り立っているといってもいいくらいです。

それでは、その短期記憶の中から長期記憶として定着される情報はどのように選ばれるのでしょうか。

3-1. 強烈な印象であること

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五感で受けた刺激が脳に伝わって短期記憶として海馬に保持されると、大脳辺縁系で海馬の先端部にある「扁桃体」という部位で、「快」か「不快」か、「好き」か「嫌いか」といったシンプルな二択が行われてから感情が生まれます。

喜怒哀楽といった感情が変化することを「情動」といいますが、情動をコントロールしているのが、この扁桃体。

ここで情動が大きい情報は、大脳皮質へと送られて長期記憶になります。
生涯の記憶となるような情報は、大きな喜びや大きな悲しみなど、激しい情動をともなっていますよね。
短期記憶として保持された情報に、意識的に大きな情動を与えることができれば、長期記憶として貯蔵されることになります。

3-2. 重要であるという認識

大きな情動をともなう短期記憶が長期記憶として大脳皮質に刻まれるのは、脳が「生き残るために重要な情報」だと判断するからです。
大きな危険を感じたことなどは、一生忘れませんよね。

記憶力を高める目的でこの条件を利用するときには、記憶したいことを明確にして、余計な情報は短期記憶にしないことが大事。

試験勉強を思い出してください。
試験に出そうな情報を覚えなければいけないわけですから、余計な情報を頭に入れて短期記憶のメモリ容量を使わないほうがいいのです。
参考書は多ければいいというものではなくて、これというものを選び、試験に出そうな情報を選ぶ取捨選択が必要とされるわけです。

重要な情報を選択しなければ、短期記憶を効率的に残せないということですね。

3-3. 反復による定着

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多くを説明するまでもなく、反復は記憶の基本ですよね。

効率的な反復法とは、海馬が記憶を保持している間に、少しずつ間隔をあけて復習すること。
東京大学で多くの学生たちが実践しているという反復法を紹介しましょう。

まず学習した翌日に1回目の復習、それから1週間後に2回目、それから2週間後に3回目、さらにその1か月後に4回目の復習をするというものです。
この反復法の優れているところは、海馬が短期記憶を保持している最長期間といわれる1カ月の間にゆっくりと確実に記憶を定着させるところにあります。

ぜひ実践してみてください。

 

4. 短期記憶障害とは?

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短期記憶を保持している海馬に障害が起こると、日常生活に支障をきたし、重症になれば記憶障害を引き起こします。

短期記憶障害として代表的なものが、アルツハイマー型認知症です。

4-1. 短期記憶からなくなるアルツハイマー型認知症

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アルツハイマー型認知症の初期症状は、大脳皮質に刻まれている長期記憶は思い出せるのに、ついさっきのことが思い出せなくなります。
昔のことは覚えているのに、少し前に食事したことを忘れてしまうのです。

これは、ある種のタンパク質が海馬を委縮させてしまうことが原因。
まず短期記憶障害が現れて、悪化すると大脳皮質まで委縮が広がって時間や場所もわからなくなっていきます。

アルツハイマー型認知症は、50歳前後から原因になるタンパク質が脳内に蓄積をはじめ、70歳くらいで発症するケースが一般的です。
この病気には、遺伝的体質も要因になりますが、食生活を見直すことで、原因となるタンパク質の蓄積を抑えることが可能。

やはり、若いうちから食生活を考えることは大切ですね。

4-2. 意識がある「もの忘れ」は心配ない

誰でも年齢を重ねると「もの忘れ」が多くなるのは、冒頭で解説したように、脳の神経細胞に酸素や栄養素を十分届けられなくなることで、記憶のネットワークづくりがうまくできなくなるからです。

ですから、もの忘れが多くなってきたからといって、短期記憶障害を起こしているとは限りません。
短期記憶障害と判断するポイントは、もの忘れを意識しているかどうか。
「最近、もの忘れが多くなったなあ」と意識しているのであれば、それは短期記憶障害ではありません。

もの忘れを自分でわかっていなくて、家族や友人に指摘されるような場合は専門医の受診が必要かもしれません。

 

5. 短期記憶を鍛える方法

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短期記憶は海馬のメモリ容量が少ないために、鍛えるにしても限界があります。
短期記憶を長期記憶にする脳トレはいろいろとあるにしても、短期記憶自体を増やす方法は限られてくるのです。

そうした難しい状況の中でも、ここでは、誰にでもできる方法を2つ紹介しましょう。

5-1. 短期記憶の容量を増やす「メモ」

脳の海馬は、パソコンのようにメモリを増やすことができません。
内臓メモリを増やせないのであれば、外部メモリを増設するしかありませんよね。

短期記憶の外部メモリとして働くのが、「メモ」なのです。
覚えておきたいこと、記憶に留めておきたいことは、何でも書いておく、録音しておく、写真に残しておくといったメモは、海馬の容量不足を補うもっとも簡単で効果的な手段。

手帖を持ち歩いてメモをとるのが苦手だという人も多かったのですが、いまや誰もがスマートフォンをもっているのですから、使わない手はありません。
文字情報、音声、画像とどのような形態でも簡単にメモができて、場合によってはネットワーク上に情報を残したり、誰かに転送したりできるのですから、記憶する必要もなくなります。

メモに残したのだから、もう覚えていなくても大丈夫だという安心感は、脳の負担を減らしてストレスを軽減します。
短期記憶のメモリ増設には最適ですね。

5-2. 血流改善で脳機能を活性化

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短期記憶は、海馬の状態を健全に保つことで、機能低下を防ぐことができます。
そのためにはやはり、神経細胞に十分な酸素や栄誉素が届けられて、老廃物を排出できることが大事なのです。

脳内の血流をよくするポイントは2つ。
まず、頭部への血液の通路となる、首や肩周辺の血流を悪くしないことです。
首や肩のストレッチをして頭部への血流を確保しましょう。
もちろん血液は全身をめぐっているものですから、全身の血流改善も大事です。

もうひとつは睡眠の質をよくすること。
日本人の平均睡眠時間は7時間半くらいといわれていますが、同じ時間寝ていても深い眠りがとれていないと、睡眠の効果は半減してしまいます。

睡眠中に海馬は短期記憶の整理を行い、消す情報と長期記憶として定着させる情報を選ぶといわれています。
さらに大事なのが老廃物を排出させることです。
身体の隅々から老廃物を集めて最終的に鎖骨の下あたりで静脈に合流するリンパのシステムは、脳内にはありません。

長い間、脳はどうやって老廃物を排出しているのか謎だったのですが、寝ている間に脳が収縮して頭蓋骨との間にすき間をつくり、これが老廃物を排出させるシステムであることがわかったのです。

 

まとめ

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短期記憶を長期記憶として定着させることが、記憶力アップのカギではありますが、短期記憶は必ずしも長期記憶として残したい情報が集まっているわけではないことを理解していただけましたね。

短期記憶には、日常生活に欠かせない作業記憶という重要な一面があり、メモリ容量の少なさをカバーするために、「忘れる」という作業が行われるのです。

短期記憶を保持する海馬は、ストレスの影響を受けやすい部位なので、ストレスケアも健全な短期記憶をつくり出す要因です。
ぜひ、あなたも今日から、「メモ」と「血流改善」と「ストレスケア」を意識して脳を活性化させてください。

 

【参考資料】
・『60代から頭がよくなる本』 高島徹治 著  興陽館 2019年
・『最新科学で解き明かす 最強の記憶術』 澤田誠 他 洋泉社 2017年

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